芸術の秋、読書の秋。名建築な図書館5選&意外と知らない建築家の話

目次

今年は暑い期間が長かったですが、ここのところ一気に秋になりましたね。


毎年このくらいになると「○○の秋」という言葉がどこからともなく聞こえてきて、今まさに「秋らしいことをしたい!」と思っている方も多いのではないでしょうか?


そこで今回は、この季節にピッタリなお出かけ先として、名建築を味わえる「アートな図書館」をご紹介します!


また記事の後半では、意外と知らない「建築家」についての基礎知識も解説していきます。
ぜひ、名建築に行く前に読んでみてくださいね!


秋のお出かけには「アートな図書館」がおすすめ!

アートな図書館


「なんだか食欲の秋ばかりになってしまっている……」
「気候もいいし、ふらっとどこかへ出かけようかな」
なんて方におすすめしたいのが、芸術的な建築が楽しい「アートな図書館」。


この「アートな図書館」が秋のお出かけにおすすめな理由、それはなんといっても「芸術の秋」と「読書の秋」を同時に味わえるからです!秋は芸術や読書を楽しむのにちょうどいい季節ですよね。


そして、建築家のこだわりが詰まった「名建築」と言われるような図書館は、実は全国にたくさんあるんです!
そして中には、国内外の建築の賞を受賞している図書館もありますよ。


この秋は、有名建築家の手掛けた作品の中で、ゆっくり読書にふける贅沢を楽しんでみてはいかがでしょうか。


芸術の秋も、読書の秋も!今行きたい「アートな図書館」5選

ここからは、名建築な図書館の中でも今行けるアートな図書館を5つご紹介します。ぜひ足を運んでみてくださいね!


岐阜市立中央図書館(岐阜県)

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岐阜市立中央図書館は、岐阜県岐阜市にある複合施設「みんなの森ぎふメディアコスモス」内にある、公共の図書館です。広い2階建ての施設で、2階部分がまるごと図書館になっています。


なだらかな曲線が特徴のこちらの施設、外観も素敵ですが、図書館に入るとさらに驚きます。
広々として明るく、近未来的なデザインである一方で、木製格子の天井や、傘のように利用者を包み込む「グローブ」の模様がどこか日本的で、居心地の良い空間になっています。


この建築の構造は、デザインだけでなく、建物内の光や熱の省エネルギー化にも寄与しているそうですよ。

岐阜市立中央図書館の公式サイトはこちら


建築家:伊東 豊雄(いとう とよお)

岐阜市立中央図書館を含む「みんなの森ぎふメディアコスモス」を設計したのは、建築家の伊東豊雄氏です。


1941年生まれの一級建築士で、現代の日本を代表する建築家と言われています。
代表的な作品には、宮城県の「せんだいメディアテーク」や東京都の「多摩美術大学図書館」などがあり、全国で作品を見ることができます。


日本建築学会賞作品賞をはじめ、国内外で数多くの賞を受賞しており、2013年には建築界のノーベル賞ともいわれるプリツカ―賞を、日本人では5番目に受賞しました。


国際子ども図書館(東京都)

国際子ども図書館


国際子ども図書館は、東京都の上野駅近くにある図書館で、日本で初めての児童書専門の国立図書館です。
子ども図書館という名前ですが、年齢関係なく、だれでも無料で利用できます。


国際子ども図書館の「レンガ棟」は、もともと明治39年に帝国図書館として建てられたもので、国際子ども図書館として利用するにあたり、機能を高めつつ原形を生かしたかたちで改修が行われました。


東京都選定歴史的建造物にも指定されていて、外観から内観に至るまで、ルネサンス様式の明治期建築の風情をたっぷりと感じることができます。

国際子ども図書館の公式サイトはこちら


建築家:安藤 忠雄(あんどう ただお)

国際子ども図書館設立にあたって改修の設計をしたのは、建築家の安藤忠雄氏と、設計事務所である株式会社日建設計です。


安藤氏は、1941年生まれの一級建築士で、世界的に高い評価を受ける建築家です。
代表作の「光の教会」や「住吉の長屋」にみられるように、幾何学的な構成やコンクリート打ち放しの斬新な建築が特徴です。


建築界のノーベル賞ともいわれるプリツカ―賞(日本人で3人目)や日本建築学会賞など、国内外で数多くの賞を受賞しています。


★「設計事務所」については、こちらの記事もご覧ください!


宮城県図書館(宮城県)

宮城県立図書館 / Miyagi Prefecturel Library (1)

宮城県図書館は、宮城県仙台市にある県立の図書館です。
手つかずだった自然を壊さないため、極力地形を改変しないかたちで建設されました。


森の中にたたずむ細長いチューブ状の建物は、外から見ると宇宙船のようにも感じられます。
また、館内は広々と開放的で、落ち着いた雰囲気の中で静かに読書を楽しむことができます。


宮城県立図書館 / Miyagi Prefecturel Library (2)

そして、こちらの写真の風景に見覚えがある方もいるのではないでしょうか?
実はこちらの図書館、映画「図書館戦争 THE LAST MISSION」のロケ地としても使用されました。ファンの方はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

宮城県図書館の公式サイトはこちら


建築家:原 広司(はら ひろし)

宮城県図書館を設計したのは、建築家の原広司氏です。


原氏は1936年生まれの建築家で、日本全国の巨大建築を数多く手がけています。
代表作の大阪「梅田スカイビル」や、京都府の「京都駅ビル(JR西日本)」のように、時代に影響を与えるような建築を多く生み出しています。


その活躍は、日本建築学会大賞やBCS賞などの受賞歴にも見てとることができます。


金沢海みらい図書館(石川県)

金沢海みらい図書館

画像提供:金沢市


金沢海みらい図書館は、石川県金沢市にある公共の図書館です。


まず気になるのが、その特徴的な外観ですよね。
白い箱のような建物の壁面にうかぶ水玉模様。実はこれ、読書に最適な自然光を取り込むために設計された「窓」なんです!日が落ちて暗くなると、その丸い窓から漏れる図書館の光が、行燈のように周囲をやさしく照らします。


そして中に入ると、その開放的で美しいデザインに、また驚くはずです。


この図書館は世界的にも高い評価を受けており、2014年にアメリカの旅行ガイドが選ぶ「世界の魅力的な図書館 ベスト20」にも選出されました。

金沢海みらい図書館の公式サイトはこちら


建築家:堀場 弘(ほりば ひろし)・工藤 和美(くどう かずみ)

金沢海みらい図書館を設計したのは、「シーラカンスK&H株式会社」の堀場氏と工藤氏による建築家ユニットです。「シーラカンスK&H株式会社」は堀場氏と工藤氏が主宰する設計事務所で、1986年に設立されました。


代表作として、熊本の「山鹿市立山鹿小学校」や福岡の「福岡市立博多小学校」など、学校建築も多数手がけています。


堀場氏と工藤氏は、日本建築学会賞や文部科学大臣賞など数多くの輝かしい賞を受賞しており、日本を代表する建築ユニットです。


★「設計事務所」については、こちらの記事もご覧ください!


大阪府立中之島図書館(大阪府)

大阪府立中之島図書館 外観


大阪府立中之島図書館は、大阪市北区中之島にある公立の図書館です。


その歴史は古く、なんと、図書館本館の中央部分と第1号書庫は明治37年に、本館の左右両翼部分は大正11年に開館しました!落ち着いた雰囲気の館内では、あちらこちらにレトロな味わいを感じることができます。


また、建造物としての史料価値もとても高く、建物の一部が国の重要文化財になっています。


15~18世紀くらいのヨーロッパ建築を彷彿とさせる美しいデザインは、訪れるだけでタイムスリップしたような気分にさせてくれますよ。

大阪府立中之島図書館の公式サイトはこちら


建築家:野口 孫市(のぐち まごいち)

大阪府立中之島図書館(増築部を除く)を設計したのは、明治~大正期に活躍した建築家・野口孫市氏です。


野口氏は、創業間もない住友営繕(住友財閥の建築組織で、現在は株式会社日建設計)の礎を築いた人物で、代表作には「大阪心斎橋」や神戸の「住友家須磨別邸」などがあります。


東京駅などを設計した、かの有名な建築家・辰野金吾氏に師事しました。


おまけ:いつかは行きたい「素敵すぎる大学図書館」3選

ここからは、わざわざ足を運びたいほど素敵な大学附属図書館を、ちょこっとご紹介します。

現在は感染症対策などの観点から、学外の人の利用は制限されていますが、状況を見てぜひ行ってみたいですね!


国際教養大学中嶋記念図書館(秋田県)

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国際教養大学中嶋記念図書館は、秋田県秋田市にある公立大学・国際教養大学の付属図書館です。


この図書館は、「『本のコロセウム』をテーマに『本と人との出会いの場となる劇場空間』としてデザインされた」(国際教養大学公式サイトより)そうで、文字どおり本に囲まれるワクワク感を味わうことができますよ!

名産の秋田杉をふんだんに使用した美しいデザインは、数多くの建築賞を受賞しているのも納得ですね。


※2022年10月現在、一般利用の時間が制限されています。詳細は、国際教養大学の公式サイトをご確認ください。

公立大学法人 国際教養大学の公式サイト「中島記念図書館」のページはこちら


建築家:仙田 満(せんだ みつる)

国際教養大学中嶋記念図書館を設計したのは、建築家の仙田満氏です。


1941年生まれの一級建築士で、子どものための環境づくりやランドスケープなどを得意としています。


代表作には富山県の「富山県こどもみらい館」や広島県の「広島市民球場」などがあり、日本建築学会大賞や村野藤吾賞など多くの受賞歴があります。


武蔵野美術大学図書館(東京都)

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武蔵野美術大学図書館は、東京都小平市にある武蔵野美術大学キャンパス内の図書館です。


周囲の木々が映り込むガラス張りの外観「書物の森」を表現したという珍しい渦巻き状の本棚の配置が特徴的です。

幾重にもなる本棚の壁のあいだを、森のように散策する感覚が味わえる、楽しい図書館です。


※2022年10月現在、学外の方の利用はできません。最新の情報は、武蔵野美術大学図書館の公式サイトをご確認ください。

武蔵野美術大学図書館の公式サイトはこちら


建築家:藤本 壮介(ふじもと そうすけ)

武蔵野美術大学図書館を設計したのは、建築家の藤本壮介氏です。


1971年生まれの一級建築士で、これからの日本を代表する建築家の一人と言われています。


手掛ける作品の幅は広く、日本建築大賞やモンペリエ国際設計競技最優秀賞など多数の受賞歴があります。現在は、2025年の「大阪・関西万博」の会場デザインプロデューサーとしても活躍しています。


多摩美術大学図書館(八王子図書館)(東京都)

多摩美術大学図書館

こちらでご紹介するのは、多摩美術大学の八王子キャンパス内にある、多摩美術大学図書館(八王子図書館)です。


この図書館、一見しただけでその斬新なデザインに気づきます。なんと、窓や柱、壁面に至るまで、全体的にアーチ構造でできているんです。


さらに、キャンパス内のスロープをそのまま建物内まで引き込んでいたり、壁面の大部分が大きなガラス窓になっていたりと、周囲の自然との境界を感じさせない、開放的で落ち着いた空間になっています。


※2022年10月現在、在学生および卒業生以外の方の利用はできません。最新の情報は、多摩美術大学図書館の公式サイトをご確認ください。

多摩美術大学図書館の公式サイトはこちら


建築家:伊東 豊雄(いとう とよお)

※伊東氏についての解説は、「岐阜市立中央図書館(岐阜県)」をご参照ください。


そもそも建築家とは?お出かけ前に知っておきたい基礎知識

ここまでは、芸術的な建築が楽しめる「アートな図書館」と、それを設計した建築家をご紹介してきました。行ってみたい図書館は見つかったでしょうか。


ところで、あなたは「建築家」についてどのくらいご存知ですか?

普段から建築に関わっている方や、興味がある方でなければ、「どんな仕事をしている?」「建築士との違いは?」など、意外と知らない方が多いかもしれません。


そこでここからは、いまさら聞きにくい「建築家」の超基礎知識についてご紹介していきます。
名建築な図書館に出かける前に、ぜひチェックしてみてくださいね!


「建築家」とは何をする人?

建築家の仕事内容


実は、「建築家」という言葉には明確な定義がありません。一般的には、建築設計の仕事、その中でも特に意匠設計を得意とする人のことを言う場合が多いようです。


建築設計とは?

建築設計は、「意匠設計」「構造設計」「設備設計」の3種類に分けられます。


【意匠設計】建物全体のコンセプトやデザインの設計、他の設計の取りまとめ役などを担う

【構造設計】建物の強度や安全性を確保するための構造計算などを担う

【設備設計】建物の利用者が快適に過ごすために必要な設備の検討、配置・配線などの設計を担う


「建築家」と言われる人の仕事内容は、主に以下の4つです。

1. 建築主へのヒアリング・打ち合わせ

・建築主のニーズのヒアリング

・コンセプトの設計、建設にあたっての制約の調査など

・大まかな図案や仕様書などの作成

・建築主との打ち合わせ(提案・修正)


2. 建築物の設計

・実際の工事に向けた詳しい設計図や仕様書の作成

・建築設計全体のとりまとめ

・工事費の予算配分、実施計画書の作成


3. 工事監理

・設計図通りに工事が行われているか定期的に確認


4. その他(法令関係の事務手続きなど)

・許認可手続きの書類作成

・役所や消防などとの協議、申請


「建築家」の仕事には意外にも、工事のチェックや事務作業なども含まれるのですね!


「建築家」と「建築士」の違いとは?

「建築家」とよく似た言葉に「建築士」がありますが、この違いを意識したことがある方は少ないかもしれません。この2つには、以下のような明確な違いがあります。


建築家:職業の一般的な呼び名

建築士:国家資格の名称


つまり「建築家」は、建築に携わる仕事をする人の総称で、資格のありなしは問いません。一方で「建築士」は、国家資格を持っている人しか名乗ることはできません。


また日本では、「建築士」でないと設計・工事監理できる建築物に大きな制限がかかるので、結果的に「建築家」と呼ばれる人は、「建築士」の国家資格を持ってる場合が多いです。


「建築家」になるのは難しい?

素晴らしい空間をつくる「建築家」は、あこがれの職業として名前があがることも多いですよね。
しかし、予想に違わず簡単になれる存在ではないのも確かです。


参考までに、多くの「建築家」が取得している「建築士」の資格について、令和3年の合格率は二級建築士で23.6%一級建築士で9.9%(※)でした。

一級建築士には受験資格が設けられていることも考えると、かなり難関の試験であることが分かります。

※参考:(公財)建築技術教育普及センター「一級建築士試験 試験結果」「二級建築士試験 試験結果


とはいえ「建築家」の仕事は、自分の仕事がかたちとして残る、正解がないため探求のしがいがあるなど、やりがいが大きく、さらに社会貢献度も非常に高い、かっこいい仕事です。

また、現在は建築にとどまらず、都市計画やランドスケープなど、建築家の活躍の幅も広がっているため、もし少しでも興味のある方は、ぜひ挑戦していただきたい分野です!


●建築分野に進むには

なお、建築分野で活躍するためには、建築についての専門知識を学んでいく必要があります。建築の専門知識を学ぶ方法は、主に以下の3つがあります。

(1)大学・短大の建築学科で学ぶ

(2)専門学校・スクールなどで学ぶ

(3)独学する


けっして楽な道とは言えませんが、社会人になってからも「建築家」「建築士」になるチャンスは大いにあります。ぜひ参考にしてみてくださいね!


★建築の仕事に少し興味がわいた方は、こちらの記事もおすすめです!


この秋は、名建築な図書館で贅沢な時間を!

今回は秋のお出かけにおすすめな、名建築を楽しめる「アートな図書館」をご紹介しました。


全国にはこのほかにも、建築が魅力的な図書館がまだまだたくさんあります。


美味しいものをめぐる旅もいいですが、この秋は、芸術的な建物をつくった建築家の意図に思いをはせつつ、ゆっくり読書にふける「本の旅」に出てみるのも良いのではないでしょうか?


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